まとめ記事・動画
心に残る鯛茶漬けで歴史を紡ぐ、歴史ある料理屋『若栄屋』【SALLiA’s リトリート第39回】
皆さんは、杵築の歴史ある飲食店をご存知だろうか?
創業326年。江戸の初期から続き、杵築城の殿様に愛された「鯛茶漬けうれしの」が名物の『若栄屋』だ。
鯛茶漬けといえば、全国各地で名物として掲げられており、多くは出汁をかけて食べるものが多いが、『若栄屋』の「鯛茶漬け うれしの」は、秘伝の胡麻だれに漬け込んだ新鮮な鯛の切り身を乗せたご飯に、適温の緑茶をかけて食べる唯一無二の一品だ。
あまりの美味しさに「うれしいのう」と呟いた殿様の一言が、料理名にそのまま用いられたというエピソードだけでなく、あの有名なグルメ漫画「美味しんぼ」にも掲載されたこともあり、その事実が料理としてのクオリティーの高さをも物語っている。
今回、私がいただいたのは「竹の膳」というランチでいただけるメニューで、内容は、鯛茶漬けうれしの、鯛の兜焼き、小鉢三種、茶碗蒸し、香の物、デザートと、一品一品、素材の味を引き出す繊細な味付けを楽しめる充実したラインアップだった。
歴史があるということは、それだけその商品を愛し、後世に繋いでいきたいと思った人たちが確実にいたことの証左でもある。
美味しいものを食べた時、自然と自分の大切な人たちに食べさせたいと思ったことはないだろうか?「美味しいと感動した気持ち」は、誰かと共有することで、初めて”大切な思い出”になる。後世に伝えたいという想いは、そういった何気ない日常の中で出会う”感動”から始まるのだろうと、『若栄屋』の一品一品を味わう度にしみじみ思った。
やはり特に衝撃だったのが「鯛茶漬け うれしの」で、鯛茶漬けというと、どうしても鯛の生臭さが残っているのでは?というイメージも強く、最初は恐る恐る一口を口に運んだ。
だが、その懸念は杞憂に終わり、不安は美味しさの衝撃へと瞬時に変化した。緑茶の程よい香りによって、海苔と胡麻の風味が引き立ち、鯛の生臭さは一切感じられない。
さらに、熱い緑茶をかけることにより、鯛の身が柔らかくなり、旨味が凝縮され、鯛の刺身でもない、焼き身でもない、全く新たな食感が口の中で広がり、「私が食べているのは鯛だよね?」と、頭が軽く混乱するぐらいの衝撃だった。
素材一つ一つは慣れ親しんだものばかりで、鯛茶漬けの存在も知っていたのに、「鯛茶漬け うれしの」素材一つ一つは慣れ親しんだものばかりで、鯛茶漬けの存在も知っていたのに、「鯛茶漬け うれしの」が、こうも私にとって”未知との遭遇”になるとは思わなかった。私と同じように、衝撃を受け、文字通り人生を捧げるほど「鯛茶漬け うれしの」に魅了されたと語ってくれたのが、女将の香名子さんだ。
「元々、全国を食べ歩くほど鯛茶漬けが好きだったのですが、『若栄屋』の鯛茶漬けに出会った時、「日本人全員食べた方がいい!」と思うぐらいの衝撃を受けました。「君は鯛茶漬けと結婚したようなものだね」と冗談で言われるほど、私の人生をかけて『若栄屋』の鯛茶漬けを知ってほしいと、初めて出会った時からその熱量は変わっていません」(女将・香名子さん)
唯一無二の味わいで、江戸時代から、令和までの時代と共に、人々に愛されてきた『若栄屋』の「鯛茶漬け うれしの」。だが歴史があるからこそ、それを守り続ける上で、求められたのが、『若栄屋』の「鯛漬け うれしの」を県外の人にも知ってもらうという試みだったという。
16代目当主の後藤さんはこのように語ってくれた。
「2008年のリーマンショック以降、地元のお客様、県外のお客様、そしてお取り寄せのお客様という三本の柱を立て、より多くの方に『若栄屋』の「鯛茶漬け うれしの」を知っていただくことを目指しました。今までは店舗でしか食べられない門外不出の鯛茶漬けでしたが、やはりお店で待っているだけではダメだということで、お取り寄せのサービスや、催事への出店、イートインなどをスタートし、それ以前は1ヶ月に300人程の来店者数でしたが、サービス開始以降、1カ月で1800人〜2000名ほど来店してくださる方が増えました」(16代目当主・後藤さん)
お取り寄せやふるさと納税の返礼品などの、受け取る側の選択肢を増やしたことで、「鯛茶漬け うれしの」と出会いを果たし、実際に旅行などで『若栄屋』の店舗へ足を運ぶ人も多いそうだ。
「最初は一人で来られたお客様も、後に家族や社員旅行など、身近な方々と共にお越しくださることが多いですね。また海外の方は、鯛茶漬けの起源などをご説明させていただくと、そのエピソードも含めて味わい、喜んでくださっている印象です。旅の目的地の一つとして『若栄屋』を設定していただき、そして実際に杵築の町に来て、食の喜びも含めて、体験として楽しんでいただけたら嬉しく思います」(16代目当主・後藤さん)
独自性を伴う『若栄屋』の「鯛茶漬け うれしの」だが、お取り寄せの開発でも独自の技法を用い、完成まで漕ぎ着けたという。
「開発当初、お取り寄せの鯛茶漬けは、タレに漬け込んだ鯛の切り身が多かったのですが、『若栄屋』では、刺身とタレを別にして開発を行いました。お店で食べるものと変わらない再現度だと、仰ってくださる方も多く、地元の方が県外の方への贈り物としてお取り寄せサービスを利用してくださること多々あるようです」(16代目当主・後藤さん)
変わらない味だからこそ、時代と共に伝える手法をアップデートさせながら、歴史を紡いでいく。拡大するのではなく、継承していくことに重きを置いているという16代目当主の後藤さん。
美味しいものを食べて嬉しい気持ちが、そのままその名に冠されている『若栄屋』の「鯛茶漬け うれしの」。「鯛茶漬け うれしの」によってもたらされた多くの嬉しさや喜びこそが、歴史を紡ぎ、後世へと繋いでいく糧となっている。
取材・文=SALLiA
電話:0978-63-5555
営業時間:11:00~15:00(夜は要予約)
定休日:12/31~1/1は休み
駐車場:30台
HP:https://wakaeya.thebase.in/
大分県/杵築市/大分/杵築/杵築グルメ/杵築ランチ/うれしの/鯛茶漬け/食事処/杵築名物/老舗
おすすめトピックス
カテゴリ
TOPICS