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また会いたくなる女将と、何度も帰りたくなる温泉宿『山田別荘』【SALLiA’s リトリート第32回】
別府の中でも賑わいを見せる北浜に位置しながら、まるで時が止まっているかのような静けさと、人の温かさが混在する素敵な宿がある。
『山田別荘』は、現女将の曾祖父が昭和5年に建てた別荘で、戦後に旅館として生まれ変わり、今なお昭和初期の名残を感じるレトロな佇まいを見せている。
明るい人柄で、来る人を優しく包み込む女将のるみさんに話を伺った。
「『ここにまた来るために1年間働きました』と仰ってくださる方や、毎年決まった期間に必ずお越しくださる方など、親戚の家に遊びに来るような感覚で、山田別荘を気に入ってお越しいただくお客様が多いんです」(女将のるみさん)
海外からは、フランスなどの欧米圏や、台湾、韓国などのアジア圏からもリピーターが集い、日本国内でも東京や大阪、京都など、九州外からのリピーターも多いという。
懐かしさと居心地の良さが混在したアットホームさがありながら、いつもとは違う非日常感という刺激も感じさせてくれる、まさに”たまに行く親戚の家”のような温かさが『山田別荘』にはあるのだ。
元々は、山田家が生活していた家族が住む場所だった『山田別荘』。
家に対する思い入れと愛情を抱きながら、ここで暮らしていた家族が代々運営しているということも、アットホームでレトロな旅館の世界観を構築している重要な要素といえるだろう。
人が大好きだという女将のるみさんが、女将に就任したのは24歳の時。試行錯誤の日々が続いたという。
「建物自体が、日本らしい温かさと歴史を感じられるものだと思うので、特に海外の方には魅力が届きやすい部分はあったのですが、日本人の方にもきちんと魅力を感じていただけるように、20年くらい前に、旅館としてのコンセプトや見せ方をきちんと考えようということで、一度プロデューサーの方にコンサルティングをお願い致しました。ホテルと旅館の間のような、ホッと肩の力が抜けるような距離感での接客を心がけ、夜は別府の街の活性化のためにあえて朝食だけをお出しするという形にしています」(女将のるみさん)
”シンプル”という言葉が、この『山田別荘』にはぴったりだと私は感じた。
無駄なものや不要なものがないからこそ、最低限だからこそ満たされて、真っ直ぐ届く「おもてなし」。
建物自体が持つ歴史を重ねてきた説得力と、多くの人々を迎え入れてきた温かさと、それに伴う来る人の心を解放し、自由にさせてくれるかのような包容力を感じる接客。
それらが融合している場所こそが『山田旅館』の揺るぎないコンセプトであり、一朝一夕では真似できない、居場所としての確固たる価値を築いているのだろう。
そのシンプルさには、朝食でも表現されている。女将自らが生産者のもとへ足を運び、選び抜いた地元大分産の食材を使っている、まさに理想の朝ごはんを絵に描いたような朝食だ。特に、安心院(あじむ)で丹精込めて育てた無農薬のお米が人気で、「こんなにお米って美味しかったのか!」と驚くお客様も多いという。
そして温泉も、『山田別荘』に欠かせない要素だ。露天風呂と内風呂で異なる源泉を使用しており、それぞれ違う泉質を持つ温泉を組み合わせた、温泉地・別府ならでは入浴方法「機能温泉浴」も可能となっている。
貸し切り露天風呂は50分3000円、内湯は500円で日帰りでも利用することができ、こちらも人気を博しているそうだ。
建物、温泉、食事、接客、すべての要素が『山田別荘』から提供される”癒し”に欠かせない要素といえるが、そんな”癒しの力”を、女将のるみさんが強く実感するのが、お客様が旅館を出て日常に帰る時の表情を見た時だという。
「最初は疲れた表情でお越しになるお客様が多いのですが、帰る時には本当にまるで人が変わったかのような、良い表情になられていて、それが何より嬉しい瞬間です。お客様からは、会うと元気になると仰っていただくのですが、逆にいつも私が元気をいただいていますし、そういった一期一会の瞬間だからこそ、得られるものがあるのだとお客様と日々向き合う中で感じますね」(女将のるみさん)
いつもと違う景色と雰囲気がありながらも、家のような安心感に包まれることで、適度に自由に振る舞える親戚の家のような空気感を持つ、稀有な旅館。それが『山田別荘』だ。
取材・文=SALLiA
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