大分のおいしいネタ、抽出しました。

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体の疲れよりも厄介なのが、心の疲れだ。「忙」という漢字は、心を亡くすと書くが、まさに言い得て妙だと思う。昔の人はやっぱりすごい。

休みを取る勇気もなく、仕事をしている時間が惰性に思えてならなくなってきた今日この頃。このままじゃダメになる、そう思い「自分を取り戻す」小さな旅に出ることにした。

遠出をすることだけが旅ではない。非日常と出逢わせてくれる瞬間こそが、旅だと私は思う。私にとって日常の中で非日常を感じられる空間が「書店」だ。

元々、読書が好きで常に何か本を読んでいる日々だったが、執筆業を始めてから、必要に迫られた時にしか本を読まなくなってしまい、書店に足を運ぶこともめっきり減ってしまった。

とにかく、本に囲まれたい。できれば、古本の。そう思っていた矢先、大分で珍しい書店があると知った。大分駅から徒歩8分ほど、ガレリア竹町ドーム広場の近くに位置する『カモシカ書店』。入ってすぐ、大好きな古本の匂いが私を包んだ。

異世界に迷い込むような階段を上がっていった先には、無機質なドアがある。「入りにくいのは最初だけです」と書いてある小さな貼り紙と目が合い、思わずクスッと笑みが溢れた。

ほんの少しの勇気を出してドアを開けると、秘密基地のような刺激と落ち着きのある不思議な場所が広がっており、私は思わず目を輝かせた。

そんなワクワクする姿を悟られまいと、必死で自分を落ち着けている私を見つけ、静かに話しかけてくれたのはオーナーの岩尾さんだ。

2014年にオープンした『カモシカ書店』は、新刊、古本、カフェが併設した珍しい書店だ。岩尾さんは新宿の『ジュンク堂書店』で新刊の販売などを学び、およそ10年ほど前、大分に戻ってきたのだという。

古本には、「ユーズド」と呼ばれる一般的な中古の本と、「オールドブックス」と呼ばれる絶版後などに、価値が高くなり、古本でしか手に入らない本、「レアブックス」と呼ばれる初版本などの貴重な本の3種類があるらしく、特に大分では「オールドブックス」「レアブックス」を取り扱うお店は珍しい。

それが手に入るだけでなく、読める場所も作りたいと誕生したのがこの『カモシカ書店』だ。

老若男女、いいバランス感で幅広い世代のお客さんが足を運び、何日に一回ルーティンのように来る人もいれば、毎日来たり、観光のついでに訪れる人もいるそうだ。

「そこにいて何をしているのか?ということが、実はとても大切なんじゃないかと思う」と静かな口調で、言葉を丁寧に選びながら話してくれた岩尾さんは、まるで禅僧のような雰囲気を纏っている。

「みんなが自由でいられる場所を作りたかった」。そう語ってくれた岩尾さんの言葉で私は気づいた。そうだ、私は自由になりたかったんだ、と。

いる場所によって自分が決まるわけではない。何かをしていないと、自分が失われていくような気持ちになって、最近ずっと何かに追われていた。目的を持たない時間の中にこそ、「本当の自分」を取り戻して「自由」になっていくことができるのだろう。

10種類以上のスパイスをブレンドした特製チャイを片手に、自分の心の望むまま、自由に本を手に取り、文字を追った。たとえ、その時間に意味を見出せなくても、この場所から何かを得ることはできるはずだから。

取材・文=SALLiA

カモシカ書店
住所:大分県大分市中央町2-8-1 2F
電話:097-574-7738
営業時間:11:00~20:00
定休日:月・木曜
駐車場:なし(近隣にコインパーキングあり)
HP:https://kamoshikabooks.com
<キーワード>
大分/大分市/書店/カフェ/スイーツ/ドリンク/古本/リトリート/連載

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