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大分県内の風景を色鮮やかな切り絵に。「切り絵でめぐる大分の旅」大分人インタビュー【落合商店の週末⑱】
中津駅構内、待合室の入り口横に飾られた大分3大祭りのひとつ、『中津祇園』の山車や神輿の切り絵作品が目を引く。
一目見て忘れられないのは、黒い紙を切り抜いて確かな輪郭を与える切り絵ならではの作風と、色鮮やかな画風。
これこそが、工家氏のフィルターを通して生まれた切り絵である。
中津駅の他、様々な店舗や施設で工家氏の作品を目にしていたので、その度に思い出していた。
工家企予人(くげきよと)
中津市出身の切り絵作家、フリーデザイナー。
高校卒業後大阪のデザイン学校へ進学し、卒業後は大阪のデザイン会社へ勤務。その後中津市へと戻り印刷会社へ勤務する傍ら、独学で切り絵作家としてのキャリアをスタートさせる。
工家氏が絵に関わるようになったのは幼少時代に遡る。
「子供の頃は車が好きで、車の絵を良く描いていました。それから高校時代は美術部に在籍していたのですが、毎日デッサンとかで。自分はデザインとかがやりたかったので、あまり顔は出してなかったですね。幽霊部員ですよ(笑)」。

アトリエには、車好きな工家氏が集めた車の模型が飾られている。切り絵同様に色鮮やか
「勤務地だった大阪は繊維の街で、東レのポスターとかのデザインをしていました。10年近く大阪で勤務した後、中津に帰ってきて印刷会社に勤務していたんです。それが切り絵を始めるきっかけの入り口と言いますか…今はもうないのですが、当時あったスーパーのチラシを担当していたんです。そのスーパーの専務さんが鶴市(中津市の夏祭り、『鶴市花傘鉾神事』毎年8月の終わりに傘鉾と呼ばれる車を引いて地域を練りまわる)の責任者だったんです。祭りをするのって協賛金とかも必要で、その御礼品として絵を描いてもらえないか。という依頼がありました。」

中津市の鶴市花傘鉾大祭
「引き受けたは良いものの、どう描くかを考えていた時に切り絵を見て面白いなと。そこから図書館に行って切り絵に関する本を読み漁って作品を仕上げたのが始まりです。当時その絵がポストカードとして配られたのが好評で。」

初めて手掛けた鶴市祭りの切り絵。今にも祭りの熱気が伝わり、音が聞こえてきそうだ
話しを聞くと切り絵で様々な人と繋がり、世界が広がっていったように感じた。
トキハのカタログ表紙やカレンダーのデザインも工家氏の作品が使われている。
「トキハさんのコンペに参加したことがきっかけで、仕事をいただいています。夏と冬のギフトカタログの表紙、あとはカレンダーとかですね。トキハさんの象徴がヒマワリなので毎年夏の表紙はヒマワリ、冬は来年の干支をモチーフにしています。」
作家活動を続ける中で、切り絵の更なる可能性を感じたのだという。
「中津で盲目の方の関係者が集まる集会に参加した時に、私の絵を皆さんに触っていただいたんです。切り絵には表面に紙の凹凸があるので、手でその凹凸を感じることで描かれた絵の形状がわかると喜んでくれて。
その時に言われたのが、「自分の顔が見たい」とのことだったので、ひとりひとりの顔を切り絵にしてプレゼントしたらすごく喜ばれたこともありました」。
この他、話題が話題を呼びさまざまな依頼を受ける中で、工家氏の切り絵が中津市のお土産品として商品化される他、更には海を渡ることに。
大分の風景や中津祇園、懐かしい乗り物をモチーフにしたポストカード、中津市にまつわる『中津いろはかるた』でも色鮮やかな切り絵を見ることができる。
「その他にも杵築市の町を売り出したいという相談から、杵築の風景を題材にした作品を作ったり、大分のテレビ局のカメラマンだった方と色々とやりとりして個展を開いたり。そうこうしていると、LAで個展をすることになったんです」。
えーっ…!!!?LA!!!?
スーパーの専務から依頼された鶴市の御礼品から始まった切り絵が海を渡ってLAで個展を開催するまでになったのだ。
「アメリカ人相手なので全く反応がわからなかったのですが、いざ開催してみると初めて見る私の絵に「Amazing!!!」とか「Beautiful!!!」など多くの声を頂いて好評で。白黒が一般的な切り絵ですが、それでは面白くないと、最初から色を使って作品を作ってきました。和風なモチーフに対して鮮やかな色彩がLAの方にも受けたのかと思っています。この画風は私にしか作れない、私ならではのオリジナルです」。

中津城

深耶馬渓一目八景

杵築酢屋の坂

初雪の求菩提山(くぼてさん)

湯布院の春
「切り絵は水彩画などとは違い、紙を切り貼りして表現をします。誰でも挑戦しやすく、その人それぞれの個性が絵から出てきます。なので、同じモチーフにしても同じようには仕上がらない。必ずその人のオリジナルな画風で仕上がる。そこがまた面白いところではありますね」。
オリジナルの作風か…真似してばかりの私にとって、とても魅力的な言葉だった。
「今は中津と別府で公民館などを借りて切り絵教室をやっています。50人くらいの方に教えていますが、やはりみなそれぞれの作風に仕上がります。切り絵には間違いや正解がないと思っているので皆さんそれぞれの作風で楽しまれています」。
それを聞いて、私も挑戦したくなった。
同じように挑戦してみたい方は、ぜひ問い合わせをしてみてはいかがだろうか。
今年は中津市を中心に県北の記事を多く書きたいと考えている。
中津市を離れ、生まれ育った街ではあるがよそ者の視点でこの街を見れるようになってきた。
その視点で見た中津市などの県北の良さを取り上げていきたい。
そこで思いついたことが、工家氏の中津市を中心とした風景をモチーフにした切り絵作品だった。
問い合わせ:090-8401-1481
メール:info@kirie-kuge.com
HP: https://kirie-kuge.com/
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