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人気YouTuberの店長が腕を振るう町中華は涙の味?【落合商店の週末⑥】
「今日はダメや…。」
ため息交じりぶつぶつと一人、誰かに聞かせるわけでもなく小声でつぶやく。
その声は金曜日の午後に忙しく走り去る車の音にかき消された。
大分川に架かる明磧橋を渡り歩き続けた。
というのも、この橋を渡った先に唐揚げ好きの自分をうならせるお店があるのだ。
向かった先は『唐揚げ中華房 坊や』。
もともとは唐揚げ、お弁当のテイクアウトのお店だったが、イートインスペースを設けて町中華をイメージしたお店になったのだ。
「ぁー…もうダメや。やめたやめた…。ビールくださーい」。
「まぁこげな日もあるっちゃ。しゃーねーな」と自分に言い聞かせる。
ビールを片手にうなだれている自分とは対照的に、テレビでは春の選抜、高校球児たちが甲子園で熱戦を繰り広げている。
そうこうしていると、唐揚げが運ばれてきた。
1個が大きい。
ちっぽけな自分が情けなくなってしまう。
そして言うまでもなく、美味しすぎて絶句。
ニンニク醤油で味付けされていて、見た目の大きさだけではなく、しっかり中身でも主張している。
それに比べて俺なんか…中身が空っぽやねーか…情けない。
次いで餃子。
これも絶句。もちもちで、焼いた部分に少しパリっと感がある皮の中には濃厚な餡が詰まっていて餃子のうまみが口の中に広がった。
ただ大きいだけではなく、当然の如く美味しい。
それに比べて俺なんか…ただ顔が大きいだけやねーか…。
悲しくなってきたが、たまにはこうして町中華で一人、自分を見つめ直す時間も必要なのかもしれない。自分の事が第3者目線で見えてくる。
そしてラーメン。
男はラーメンを啜った。
服にスープが飛び跳ねようとも気にすることなく啜る。
ラーメンも美味しいようだ。絶句している。
というのも、大分市大手町のラーメン屋『ふかださん』の系列店。
ラーメンもお勧めなのは当然なのだろう。
無心で啜る男の頬から一粒の光がラーメンの中に入った。
男は泣いた。
自分の不甲斐なさに泣きじゃくった。
それでいい。
社会の荒波に揉まれたくさん傷ついてきたのだろう。
町中華の料理と空間が男を癒したのか。
たまにはこの様な時間も必要だ。
涙で味変されたラーメンの味を忘れることはないはずである。
…と見ていると、男は立ち直りが早いようだ。
(涙のラーメンの味、忘れてしまうのでは…?)
そして悪ノリする性格のようでもある。
すみません、ビールもう1本!
男は酔いに任せて、忙しい店長に何度も話しかけた。
「もともと町中華みたいなのをやりたくて、今年の3月からイートインを始めました」。
大分県内の町中華を盛り上げていきたいのだとか。
実は店長、YouTuberという一面もあり。
「ただ炒飯をつくるだけの動画を毎日アップしてるんですが、4万人フォロワーが集まりました」。
「えっ、あの短期間で4万人?」
何か動画で面白いことをやっていたことはなんとなく知っていたが、まさか人気YouTuberだったとは…
「はい、めちゃくちゃYouTubeの勉強をしたんですよ。YouTubeを見て来てくれる県外のお客さん、関東とかからも来たお客さんもいます」。
「すごっ!人気店やん!」
「YouTubeを通して県内の町中華のお店と色々コラボして盛り上げて行きたいんです」。
そういえばメニューに『YouTubeチャーハン』なるものが。
これを求めて県外からやってくるそう。
男はこの謎のYouTubeチャーハンを頼もうと思ったようだが…既にお腹が一杯になっている模様。そしてビールに酔い、挙句の果てにはお金も持ち合わせていないという始末。
「店長!今日もツケで!!」
「もういい加減にしてください!毎回毎回ツケやないですか!」
「今回で最後にするけん!お願い!」
厚かましい男だ。
しかし、まぁ元気を取り戻したようで良かったのか。
自分を客観的に見つめ直す機会は必要である。
その際はぜひ、宗方の『坊や』で。
そして、YouTubeチャーハンを一度味わってみてほしい。
住所:大分市上宗方1248-1
電話:080-4698-7918
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜
駐車場:3台
HP:https://www.instagram.com/karatyuka.munakata
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