まとめ記事・動画
音楽に身をゆだねる特別な音楽空間。山里のジャズ喫茶へ
「ジャズ喫茶」とは名の通りジャズを聴きながらお茶をするところ。「ジャズ喫茶」の存在が世間一般に広まったのは1960年代。モダン・ジャズ・ブームの勢いに乗り、日本全国にモダンジャズを聴かせる喫茶店が一気に増えたそうだ。私語厳禁。レコードを大音量でひたすら聴く。Spotifyやアップルミュージックなど、配信が常識の今じゃ考えられないが、逆にとても新鮮だ。
そんな独特の”音楽空間・ジャズ喫茶”を目指す店が、昨年10月に竹田市にオープンしていると聞いて訪ねてみました。場所は自然溢れる荻町。本当にこんなところにあるのでしょうか?(不安です…)。田舎道を車で走らせていると、小さな看板を発見!
店名は『一粒万倍』。”一粒万倍”とは、わずかなものが非常に大きく成長することのたとえ。”一粒万倍日”とは、月に4~7回巡ってくる吉日で、 “手元にあるわずかな物で始めた事が何倍にも膨らむ”とされ、新しい物事をスタートするにはもってこいの日なんですって。
そんな縁起の良い名前の喫茶店を切り盛りしているのが、猪野さんご夫婦。「竹田という地で蒔いたこの一粒の種=ジャズを始めとする音楽文化が、この地でじっくり広がっていけば」という願いも込められ、名付けられたのだそうです。
店内はまるでリビングにいるかのようなアットホームな雰囲気。そして店内の真ん中に鎮座するのが、JBLパラゴンのスピーカー。1958年に販売され、83年に生産が終了、生産数も少なくオーディオマニアにはたまらない名機だ。このスピーカーはもともと福岡のジャズ喫茶にあったものだという。それがこの店にやってきたのには、理由がある。
もともとこのスピーカーが鳴っていたのは、福岡県朝倉市の『古処』というジャズ喫茶。『一粒万倍』のママ・猪野美智子さんは、2018年に、知人に誘われてこの店に入った。数回、通ううちに『古処』のマスター夫婦に気に入られ、「店をやらないか。あなたならやれる」と指名されたのだという。
いつか喫茶店を開きたいと思っていて、音楽好きでもあった美智子さんだが、音響やジャズにはあまり詳しくないこともあり、とても悩んだのだという。その不安を超えてスピーカーを譲り受けたのは、音楽を愛する『古処』のマスター夫妻の真摯な生き方への共感だったそう。ジャズの灯は美智子さんに託され、『古処』は、2018年の終わり、51年間の歴史を閉じた。
美智子さんは「プレオープン中で、まだまだジャズ喫茶とは言えない。日々いろんなことをお客さんから教えてもらっています。ずっとプレオープンかも」と笑う。スピーカーは気温や湿度によって、微妙に音が違ってくるのだそうだ。パラゴンの音は新しい世代、新しい土地でしっかり引き継がれている。
実は引き継がれているのはスピーカー以外にも。それが湯布院の喫茶『あーでん』の椅子。2020年惜しまれつつ閉店した『あーでん』もまた、「パラゴン」を鳴らしていた音楽好きが集まる喫茶だった。そこで「王様の椅子」と呼ばれていた椅子が、ココにはあるんです。
早速レコードをかけてもらった。レコード特有の温かい音色が心地よい。言わずもがな音は最高で、純粋に聴きたい人は、スピーカー前のこの「王様の椅子」がおすすめだ。まさに音楽とじっくり向き合える特別席。ここで聴くジャズは格別です!
コーヒーはオリジナルブレンドのほか、鹿児島の有名ジャズ喫茶『パラゴン』のコーヒーもありました。食事メニューはありませんが、ここでぜひ食べてもらいたいのが「シフォンケーキ」。鹿児島のジャズ喫茶『ラグタイム』で評判だったシフォンケーキの味にほれ、美智子さんが作り方を習いに行ったのだという。ふんわりしていて中がしっとりした優しい味は、クセになるおいしさでした。ジャズ喫茶ファンにはたまりませんね。
初心者にとってハードルが高いジャズ喫茶ですが、ジャズに詳しくない私でも十分楽しめました。私語NGなお店ではありませんが、ジャズ喫茶は、「音楽を聴くこと」を一番の目的にしたお店。大声を出したり、お客さんがほかにいる場合は配慮が必要です。本を読んだり、ぼ~っとしたり、大人だからこそ体験できるひとときを堪能してみては?
電話: 090-7536-7272
営業時間:10:00~18:00(完全予約制)
定休日:不定
駐車場:10台
HP:https://9455212152.amebaownd.com/
大分/竹田市/ジャス/喫茶店/ジャズ喫茶/レコード/クラシック/珈琲/スイーツ
おすすめトピックス
カテゴリ
TOPICS